昨今において魚の体表に白い点が発症しますと、白点病と総称して扱われているところがあり、実際、白点といいましても、白点虫(クリプトカリオン・イリタンス)の寄生。白点虫より更に細かい点が現れるウーディニウム(ウーディニウム・オケラタム)の寄生(ウーディニウムは黄な粉のような粒が体表に現れる)。最近では、溶血性レンサ球菌説など、魚に現れた白点が何者なのかの判断を誤り、治療を進めても治癒できない事があります。そこで、ハコフグを知るの第三回目は、白点虫寄生症とレンサ球菌白点症(仮称)の可能性がある症例をもとに、その違いをご紹介してゆきたいと思います。


 


白点虫寄生症(クリプトカリオン・イリタンス寄生症)


海水魚飼育において誰もが必ず経験するのが寄生虫寄生症であり、通称、白点虫と言われています。ハコフグ飼育においても避けては通れない寄生虫症です。また、ハコフグの場合は、一般に言われる白点虫の生活史とは少し異なるのも、治療が長引いたり、水槽内が白点虫で蔓延してしまう厄介なところです。クリプトカリオン・イリタンス(白点虫)は原生動物で寄生虫であり、ウイルスや細菌ではありません。従って細菌やウイルスは数千倍~数万倍の電子顕微鏡などでないと見れませんが、白点虫の場合は人間の肉眼では見えない、セロントという仔虫(遊走子)であっても、100~200倍の顕微鏡(教材用/ホビー用)で確認する事ができます。クリプトカリオン・イリタンス(白点虫)の成虫は肉眼でも見ることができます。

白点虫による魚への寄生生活史としては、シスト(硬い殻に覆われた卵のようなもの)からトモントが成熟して分裂してトーマイトとなり、繊毛虫となったセロント(遊走子/仔虫)が、水中に浮遊して魚体に寄生します。セロントが魚体に寄生するとトロホントとなり、更に成熟して成虫をなったプロトモントが約3日~7日ほどで魚体を離れます。トロホントの頃から、次第に魚の体表に白点として確認できるようになる事から、白点虫寄生症あるいは白点病と言われています。

クリプトカリオン・イリタンスシスト(トモント → トーマイト) → セロント → トロホント → プロトモント → シスト。を、繰り返す。

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寄性から3日ほどで白点虫(トロホント)が体表に姿を現し始める。

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白点虫の数も次第に増えてゆく。

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成長した白点虫(プロトモント)は粒が大きく楕円形をしている。

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成熟して成長した白点虫の成虫(プロトモント)は、順に体表から離れる。

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一度、離れて減少したように見えるが、2次寄性、3次寄生と次第に白点虫の数は増えてゆく。

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白点虫寄生症の場合は、鰭の付け根は充血しない。

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治療としては、硫酸銅(銅イオン)やUV殺菌灯、ヨウ素樹脂抗菌剤、飼育水全水量交換法などがあり、寄生虫であるゆえ、成虫になると必ず魚体から離れ、シストを経て遊走子(セロント)となり、この遊走子が水中に浮遊している時を狙って、遊走子を死滅させ事により再寄生を減らしてゆくと、次第に水槽内から白点虫が減少してゆき、水槽内の白点虫の密度が減ると魚への寄生確率も減ってゆき、いずれは、魚への寄生もなくなります。しかし、白点虫が水槽内に蔓延する場合は寄生が広まり、水槽内の魚が全滅する事が有り得ます。

白点虫の発生は、主に新しく買った魚が既に仔虫(セロント)に寄生されていたり、ライブロックにシストが付着している事や、ショップの飼育水の中に遊走子(セロント)が居た事による、水槽内への混入などが考えられます。また、海水から海水への移動に限定されます。シストは休眠し、溶存酸素量が増える事により覚醒が起こりますが、休眠期間は半年~1年であり、その期間内では覚醒可能で、中には数年後に覚醒した事例もあるようです。









β溶血性レンサ球菌症(A群β型溶血性連鎖球菌感染症)


白点虫寄生症に良く似た、白い点が体表に現れ、感染されると、やはり痒がって岩などに口先や吻、体表などをしきりに擦りつける動作をします。2日から5日ほどで体表に白点として現れ、一見して白点虫と見間違う事が多いのですが、ハコフグの場合は体表の白点の出現とともに鰭の付け根や口や目の周りも充血します。日を追う毎に、白点が増え悪化すると体表が粉が吹いた状態になり、末期になると水疱内に細かい白点(β溶血性レンサ球菌)が確認できる様になります。さらに皮膜が剥離して鰭もぼろぼろと朽ちて、いずれハコフグは死んでしまいます。白点虫の場合、成長とともに白点が成虫になることにより楕円形となりますが、β溶血性レンサ球菌の場合は、白点が細かく球体もしくは偏平した白点コロニーとなり、白点の周りが薄く白濁して見えることで白点虫とβ溶血性レンサ球菌と判別することができます。溶血性といわれる由縁に付いては、羊血を用いた寒天培養地においてレンサ球菌の種類分けの為、「α」「β」「γ」の文字を書き、白点コロニーの周りの血液の溶け具合と、色合い反応の状態で区別しているということです。従って、ハコフグの体表で確認できうる、症例からβ型溶血性レンサ球菌の培養地内で起きる状態と、ハコフグは体表を明滅させる事ができる為、体表を暗化させた時の白点の周囲の溶血環といわれる、薄い白濁が確認できる事など、ハコフグの体表で起きる症状が酷似している事から、白点虫ではなくβ型溶血性レンサ球菌の可能性が極めて高いと判断するものです。



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β溶血性レンサ球菌の白点コロニーは粒が小さく、球体をしている事が多い。

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白点の周りの溶血環といわれる状態が分かる。

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光線の当たり具合によっては、画像のように白点が暗化して周りが薄く白濁してみえる。

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鰭の付け根が充血しているのが分かります。

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A群β型溶血性レンサ球菌は、常在菌であり溶連菌と言われ人の手にも付いているため、容易に水槽内へ入る事が考えられます。しかし、飼育水に存在したとしても、必ず魚へ感染発症するものではなく、新しく入れた魚が保護粘膜が取れている状態であったり、飼育水の黄ばみ(換水の怠り)や生物濾過不足による水質悪化で、魚が体調を崩して抵抗力が低下した時に、感染されやすいと考えられます。治療においても、白点虫などの寄生虫とは異なり、レンサ球菌は菌である事から体表から離れる事が無く、一度、感染され患ってしまいますと、銅治療やUV殺菌灯、ヨウ素樹脂抗菌剤を用いて治療しても治癒は困難を極めます。唯一、抗生物質が有効との事です。しかし、UV殺菌灯やヨウ素樹脂抗菌剤などを常設する事で、水槽内(飼育水)の菌を減らす事や定期的換水、生物濾過の充実を図る事で、感染を予防する事は可能と考察します。また、飼育水のpHを8.3と理想値に維持する事で、魚の体表保護粘膜の剥離を防ぐ事も、感染予防にも有効かと思います。治療法に打つ手が無いように思われるβ型溶血性レンサ球菌に感染したとしても、体力が付き抵抗力も向上してゆきますと、レンサ球菌は次第に減少してゆき、体表の白点も消滅して治癒してゆく事があります。また、溶血性レンサ球菌症は、外傷を負った魚や体調が悪い魚が感染しやすい為、健康な魚には感染発症せず、白点虫の寄生確率が増え他の魚も寄生されてゆくのと違い、一部の魚(固体)のみ発症する場合があり、白点虫寄生症かβ溶血性レンサ球菌症であるかの見極めにもなります。




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上の画像は他のミナミハコフグに吸い付かれた傷口にβ型溶血性レンサ球菌と思われる白い塊が点在している状態です。


以下四枚の画像は水温を上げたときの状態です。25℃以上になるとβ型溶血性レンサ球菌と思われる細菌の増殖が顕著となり、24℃以下になると白点が減少してゆくようです。

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水温を上げると眼も白濁してしまいます。

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ここまで悪化すると餌さも食べなくなります。

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厄介なのは、白点虫に寄生され、二次三次寄生を繰り返られる事により、体表が荒れ、そこへβ溶血性レンサ球菌が感染してしまい、白点虫と連鎖球菌の合併症を患ってしまう事があります。白点虫とβ溶血性レンサ球菌との裏付けとしての見極めは、体表にできた白点が成長して離れるか離れないか毎日観察するという事と、小型水槽などに白点が出た魚を移し、離れた白点を採取して100倍~200倍の顕微鏡あるいは、倍率の高いルーペを用いて、白点がもぞもぞ動けば白点虫(寄生虫)であり、動かなければ菌と判断できます。ただし、体表から離れた白点虫がシストになると動かなくなるので、シストになる前に顕鏡しなければなりません。


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以下の画像は白点虫とβ溶血性レンサ球菌の合併症と思われる症例。

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楕円形の白い粒と球体の白い粒が入り混じっており、白点虫とβ溶血性レンサ球菌の合併症と思われる症例。

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水疱の中に、球体の細かい白い粒が確認できる。

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鰭にも水疱の中に細かい球体の粒が確認できる。

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このような状態になると、余程の体力と生命力が無い限り、治癒は困難を極める。しかし、固体によってはこの状態から完治した事例もあります。




予防

予防としてはUV殺菌灯やヨウ素樹脂抗菌剤の常設が有効だと思いますが、なにより、白点虫やレンサ球菌に寄生、感染されてからの治療をするのではなく、寄生、感染をさせない水槽維持を心がける事が大切です。

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ヨウ素樹脂抗菌剤が入っている殺菌筒をパワーヘッドに設置している状態。

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UV殺菌灯を外部式密閉濾過槽に設置している状態。




※注:溶血性レンサ球菌感染症は、魚への感染が養殖業者などの症例報告書でも感染事例が認められておりますが、「α型」か「β型」については、その魚種や自然下での発症あるいは水槽飼育下での発症事例が異なり、上記で記載した文面は、水槽内でのハコフグへの発症事例を長年の観察および考察と情報から得たものと、飼育下において実際の症例で今現在知り得る情報から判断して書いたものであり、将来、新たな事実が分かった場合は、文面の修正と改訂をするものとします。β型溶血性レンサ球菌症においても溶血性レンサ球菌症である事は間違いないと思われます。しかし、症例から「β型」に該当する事を立証するにあたり、「β型」かどうかを確定するには感染されたハコフグを、検査機関へ病理検査依頼する必要がある為、今現在「仮説」とさせていただきます事、予めご理解ご了承願います。
















 2014_12_07


ハコフグを知るの第二回目は眼のお話しです。

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魚は体調が悪くなると呼吸が速くなったり、眼の動きが鈍くなったり餌を食べなくなるなど、色々な症状を知る事ができます。中でも私が常に魚の健康状態を観察する上で、重要視しているのが眼の動きであり瞳孔の形状です。鰓の呼吸状態の速さや摂餌の場合は体調が良くても環境や満腹になるなど、体調とは関係なく状況が変わります。眼においては体調が悪くなると顕著に症状として表れます。ただし、寝ている時だけは例外です。



以下の画像は夜間の寝ていた時に照明をつけて、眼の瞳孔が変わってゆく様子を写しました。
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イナズマヤッコの眼の瞳孔の形状にも注目してください。
DSC_1642.jpg寝ていた時の眼の瞳孔は丸くなっています。

DSC_1671.jpg目が覚め意識もしっかりしてくると眼の瞳孔の形状は楕円形になります。(例えるなら鶏の卵を横にした状態の形状)



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ハコフグ科は甲羅と面一(つらいち)になっている透明な膜で眼球が覆われていて、眼球を保護しています。また、スズキ目の魚などは眼が左右連動して同じ方向に動きますが、フグ目の特徴である眼は、カメレオンのように左右別々に動きます。


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自然界では天敵から襲われない様に警戒していなければなりませんし、周囲の様子を伺いながら餌も探さなければなりません。健康な魚ほど眼は常に機敏に動いているものです。水槽下においても混泳魚を意識しつつ餌を食べています。しかし、眼の動きが鈍く瞳孔の形状が丸みを帯びてきますと、体調が悪いという状態の表れにもなるのです。



熱帯魚ショップで実際に魚を見て買う場合でも、体調を知る目安にもなります。










 2014_09_13


ハコフグを飼育する上で、最低限知っておきたい事柄を書いてゆきたいと思います。

ハコフグは魚類学分類上、フグ目モンガラカワハギ亜目ハコフグ科に属し、フグよりモンガラカワハギに近い種類の魚です。ハコフグの体は硬い甲羅で覆われており、口、眼、鰓、鰭、体表側面の一部(亀裂あり)、以外は柔軟性がありません。ハコフグ独自の進化を遂げモンガラカワハギともフグとも似つかない体形のハコフグがモンガラカワハギ亜目に属する理由は歯の形状です。DSC_1937.jpg

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DSC_1859_2014081715064950c.jpgアイランド・カウフィッシュにも赤い歯が確認できます。

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モンガラカワハギ科にもアカモンガラという歯が赤い種類の魚がいます。一説によると、元々、和名で赤歯紋柄だったのが歯の漢字が抜けて赤紋柄になったとか。

  





サザナミフグ
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フグ科のフグの歯の特徴は上顎2本下顎2本の計4本となっております。

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和名ではハコフグと総称されておりますが、学名では現在8属25種のハコフグの仲間が存在するようです。実際、画像等で容姿が確認できるのは7属20種。


   






 2014_08_17



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プロフィール

箱福

Author:箱福
転職を境に一旦ハコフグ飼育を休止しましたが、ハコフグ飼育の再開を機にブログを始めました。不定期更新ですが、どうぞ宜しくお願い致します。病気を発症させない飼育、薬剤に頼らない飼育を目指し、ハコフグ類の水槽内繁殖の夢みて、奮闘中。

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